最新情報

最終更新日:2014.7.17|意見数:59件

芸術の学校Yotsuya Art Studium(東京新宿)については画面最下を参照。

2014

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近畿大学国際人文科学研究所ホームページにおける表記を追加報告。

4/4

3月31日をもって四谷アート・ステュディウムは閉校。 在学生有志による近畿大学への存続を求める活動は終了する。今後の活動について、いくつかの講座の受講生により、自分たちで学び研鑽する場を生み出そうとする動きが始まっている。

3/17

提出した署名の請願事項に対する回答を求めるため、在学生有志よりコミュニティカレッジオフィスへ電話で問合せ。窓口担当者からは「署名冊子を渡したが(事務長、所長からの)返答はない。今後も署名に対し何らかの見解を示すことはない」との回答を得る。


3/10

在学生有志が、これまで集めた署名(529名分)を近畿大学国際人文科学研究所コミュニティカレッジオフィスへ提出。提出の際も直接の回答は得られず。


2013年12月27日金曜日

募集要項・講座概要にもとづく問合せ

2013年12月25日、学生有志が国際人文科学研究所 事務長 木地平浩次様、および所長 人見一彦様へ閉講の時期とプロセスについてメールと書面にて問合せました。

『募集要項』『講座概要』記載の「カリキュラムは互いに連携するよう組み立てられているため、複数の講座を受講することが望まれます」との趣旨を根拠に、来年度以降も今年度と同等の講座を開くようお願いする内容です。

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時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。

11月下旬に今年度末での東京コミュニティカレッジ四谷アート・ステュディウムの閉講を伝える通知を拝受しました。閉講の時期とプロセスについて、お問い合わせいたします。

四谷アート・ステュディウムの受講料は講座毎の支払いですが、『講座概要』に「互いに連携するよう組み立てられているため、複数の講座を受講することが望まれます」と明記されており、受講生は複数年度にまたがる計画を立てて受講しています。

特に、「岡崎乾二郎ゼミ自由応用」は、「ゼミ在籍生経験者を対象に開講する。」との受講条件があるため、「岡崎乾二郎ゼミ基礎」の受講生は、次年度以降の「自由応用」ゼミ履修を念頭に、「基礎」を受講します。「基礎」履修後に「自由応用」を受講してはじめて完了するカリキュラムとして選択をしています。
講座は一連のものとして設計され、その旨が『募集要項』および『講座概要』に明記されている以上、連続して受講できないとなれば一つ一つの講座の価値が半減します。『募集要項』および『講座概要』の記載内容を遵守し、来年度以降も今年度と同等の講座を開いていただきますようお願いします。

各講座が互いに連関する一連のものである根拠を以下に記します。(原本の複写を同封します。)

2013年12月21日土曜日

プレスリリース|芸術教育とは何か?──近畿大学四谷アート・ステュディウム閉校問題で議論高まる

2013年12月19日、四谷アート・ステュディウム在学生有志が、新聞、テレビ、雑誌、出版社、web、その他報道機関へ向けプレスリリースを行いました。

本プレスリリースは、2013年11月の近畿大学による“半年後の閉校”通知を受けて、主に講師・受講生の間から広がった、芸術教育や大学のあり方をめぐる議論、そして、学校存続と閉校決定の明確な理由の開示を求める署名活動などの動向について、広く公共に投げかけるものです。


「芸術教育とは何か?
──近畿大学四谷アート・ステュディウム閉校問題で議論高まる」

[PDFファイル]

[HTMLファイル]



※以下抜粋を掲載

introduction


2013年11月、近畿大学が、芸術の学校「四谷アート・ステュディウム」(東京都新宿区四谷1-5)を2014年3月で閉校することを決定しました。それをきっかけに、講師・受講生から派生して、芸術教育をめぐる議論が高まりを見せています。

四谷アート・ステュディウムは、近畿大学国際人文科学研究所付属の教育機関、東京コミュニ ティカレッジとして2002年より始動、造形作家・批評家の岡﨑乾二郎教授がディレクター(2004-)を務めています。

大学のエクステンションカレッジが注目される昨今、校舎にギャラリーを備え、美術・建築・ダンス・音楽・文学・哲学など幅広い領域の学生がその研究・学習成果を発信し、また国内外から著名な講師・ゲストを招き、常に活気ある芸術批評講座を開催するなど、一種のメディア的な機能を果たす、その学際性豊かな活動は異彩を放っています。詩を掲載した大判のポスターを募集要項として毎年発行するなど、印刷物を含めたプロダクトの「生産を行なう実践の現場・工場」であることが、この学校のコンセプトです。

“半年後の閉校”通知に広がる声 


芸術と教育という社会問題・大学のあり方めぐり専門家の間で議論 

学校存続と情報開示を求め署名活動も


開校から11年目にして、半年に満たない期間を残して突然の近畿大学からの閉校告知を受けて、一切の情報が開示されないなか、受講生・出身者・講師らが、世界的に見ても希有なこの文化的拠点について語り出す動きが、インターネット上でただちに広まりました。とりわけ、講師ら芸術・批評の専門家が寄稿するウェブサイト「芸術教育とは何か?」では、四谷アート・ステュディウムが教育研究機関として果たす役割を軸に、広く芸術と教育という社会問題や、大学・美術大学のあり方にまで及ぶ今日的な議論が展開され、思考の場を形作っています。また、近畿大学から閉講通知が発行された後、在学生有志が学校の存続と情報の開示を求める署名活動を始動し、教育という公共的な営みに対して問いを投げかけています。

教育機関における社会的責務に関する問題提起を含むこうした動きは、四谷アート・ステュディウム以外の場所でのシンポジウムや講義の開催に波及し、画家・批評家の松浦寿夫氏(東京外国語大学教授)による連続講義がアートトレイスギャラリーで行なわれるなど、影響力の大きさを窺わせます。



* 詳細は「関連イベント情報」を参照

プレスリリース目次


01
- introduction

02
03
四谷アート・ステュディウム閉校の動きと広がる芸術教育をめぐる議論
関連ウェブサイト

04
関連イベント情報
  • アートトレイス|松浦寿夫 連続講義(全10回)
第四回「感情のインフラ、あるいは感情というインフラ」
講師|松浦寿夫(画家、批評家、東京外国語大学教授)
2013年12月26日(木)19:00-
  • レクチャー+シンポジウム(2014年春開催予定)
四谷アート・ステュディウム在学生有志主催による
問い合わせ 

協力:ART TRACE

2013年12月18日水曜日

国際人文科学研究所 事務長の木地平浩次様より、四谷アート・ステュディウム 主任ディレクターの岡崎乾二郎様を通じて連絡

国際人文科学研究所 事務長の木地平浩次様より、四谷アート・ステュディウム 主任ディレクターの岡崎乾二郎様を通じて以下の連絡を受ける。以下、学生有志が受け取ったメールより転載。

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日付: 2013年12月16日 23:05
件名: 大学より連絡

阿部さま

本日...以下の内容のメールが送られてきましたので お伝えします。「」内は引用、原文そのままです。



○12月27日に「...東京での活動(一年間の経過措置としての夏期、冬期のセミナー等の実施)について打合せをいたしたく思っており、その経緯の中で、受講生にご案内できる事項もあろうかと思っています。」

○「繰り返しとなりますが、『カレッジは本年度末を以って閉講する』以外の回答はございません。岡﨑先生には、本学教員及び副所長として、本学の決定に何とぞご理解・ご協力いただきたく思います。私としては、27日にお話した内容を以って、今後、経過措置についてどの様に受講生に対応するか大学側と調整したいと考えておりますので、恐縮ですが、その旨、早急に岡﨑先生から受講生(阿部様他、有志の方々)に連絡していただきたく、よろしくお願いいたします。」


という連絡を事務長の木地平浩次さんより受けました。
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2013年12月14日土曜日

意見書 第2号



2013年12月11日、手紙・意見書第2号・資料(閉講をめぐる経緯・学校概要・メディア掲載)を、近畿大学理事長ら13名の運営関係者の方々に送りました。

また同時に、国際人文科学研究所 所長 人見一彦様、事務長 木地平浩次様、東京事務所、 四谷アート・ステュディウム 主任ディレクター 岡﨑乾二郎様へ、同手紙と資料、および、11月20日以降に届いた意見書提出者一覧を送りました(意見書は追って送付予定)。

以下に、これまでの経緯と、四谷アート・ステュディウム閉講に関する説明会開催のお願いを記した手紙を掲載します。

2013年12月13日金曜日

閉講通知について:近畿大学へご確認のお願い


学生宛・講師宛 二種通知について


*私たち「四谷の声」から、近畿大学あて、2013年12月11日に発送した「手紙・意見書・資料(閉講の経緯・学校概要・メディア掲載)」の、資料に収めた「閉講をめぐる経緯」欄より、以下内容を掲載いたします。





閉講通知は、学生(受講会員)宛講師(講座担当者)宛の二種類が発行されています。いずれも、発行日は「平成25年11月12日」と記載され、郵送での各宛先への到着が11月20日頃でした。

私たちは、四谷アート・ステュディウムで学びたいという強い思いから、どのような条件でならば存続していただけるのかの可能性を、ぜひとも知りたいと考えております。

その立場から、通知の内容について、近畿大学にご確認の上、ご回答いただきたい点を以下に記します。


転載|講座担当者 各位|コミュニティカレッジ閉講ついて(お知らせ)


近畿大学 国際人文科学研究所
大阪コミュニティカレッジ
東京コミュニティカレッジ(Yotsuya Art Studium)

講座担当者 各位


近畿大学 国際人文科学研究所
所 長 人 見  一 彦


コミュニティカレッジ閉講ついて(お知らせ)


拝啓

時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、2002年より東京開設、翌年度大阪開設と長きに渡り先生方のご協力のもとに沢山の受講会員を集め開講してまいりました。

しかしながら、現在の研究所運営の見直しを図る必要があり2014年3月末日を持ちましてコミュニティカレッジを閉講する運びとなりました。

長年にわたる先生方のご厚情に心から感謝申し上げますと共に、突然の閉講でご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げる次第でございます。

まずは略儀ながら書中をもちまして閉講のご挨拶を申し上げます。
皆様の今後のご健勝とご発展を心よりお祈り申し上げます。

敬具

平成25年11月12日


近畿大学 国際人文科学研究所
〒577-8502  東大阪市小若江3-4-1
電話. 06-4307-3092
FAX. 06-6721-2533
Mail. jimbunken@itp.kindai.ac.jp


*講師宛閉講通知の掲載協力:松浦寿夫先生。
松浦先生に感謝いたします。



関連記事

2013年12月10日火曜日

「もう二度と作れません!」中川周

[写真家]


写真技術を専門とする視点からも四谷アート•ステュディウムの教育レベルの高さには驚かされます。昨今、写真に限らず多くの学校の技術教育プログラムが、既存の職種やインフラに依存した色合いを強め、その本質的な技術上の可能性を閉ざしているように思われます。そういった潮流の中で四谷アート•ステュディウムの特に基礎ゼミ、応用ゼミでは歴史や理論に省みつつもいち早く最新技術を取り入れるなどその実験的教育スタイルにより、決してゼミの演習課題に収まらない革新的なアイデアをこれまでに生み出してきました。私が学生として経験した中では、2009年基礎ゼミの「自然」をテーマとした期間、また2010年基礎•応用ゼミの「発明」をテーマにした時期がその趣が強くとても刺激的でした。

「憧れの意義」櫻井拓

[編集者]


学校の影響は、かならずしもそこに通う学生への影響だけではないと思います。職業人としての私にとって四谷は、アートに関する刺激的な書き手を探そうとするときに、最優先でリサーチする場所のひとつでした。四谷アート•ステュディウムが、美術の世界でどれだけ重要な人材を輩出しているかは、他の方が十分に書かれているように、疑問の余地がありません。


大脇理智 

[メディアテゥルク、ビジュアルエンジニア 、身体表現家、スタジオイマイチ代表、YCAM Inter LAB エンジニア]

芸術に置ける、いわゆる技術を学べる学校は国内にも多く開かれているが、芸術の可能性について研究を徹底的に行う学校は、このは四谷アート・ステュディウ以外他になく、日本の芸術のおいて大変重要な場であることは間違いありません。私も多くのを学ばせていただいのでは四谷アート・ステュディウの存続を望みます。


2013年12月6日金曜日

「四谷という場所」久保田貴之

[アルバイト]


なんというか、四谷が閉校になるということに今だに実感が湧かないまま、日々を過ごしてしまっています。
私は大学四年生の時から四谷に通い始めました。
授業で一番印象に残っているのは、おかざき先生が言っていた、芸術などの概念そのものを時代の変化に合わせて、今生きている私たちが更新しなければならないということ。
そのものについて語ること。考えること。作ること。定義そのものを更新すること。
描くこと、モノをつくる人たちはいつの時代も一定数存在していて、そのひとたちが更新、蓄積してきた途方もないものたちの連なりのはじっこ、その場所に今、自分はいるのだなと。 


「四谷アート・ステュディウムは、存続するべきです。」外島貴幸

[美術、漫画、パフォーマンス、文章]

私が卒業した学校は今までに二つ、なくなってしまいました。文化学院芸術専門学校の高等課程、B-semi learning system of contemporary art。既存の学校教育にどうしても馴染めなかった私は、そうしたものとは別のシステム、思想によってはじめられ、その脈流が未だに流れている、そんな「学校」に、自らの道を見出すしかありませんでした。

あるシステムに沿って生きる事ができない者は、どのような環境に身を置けるかによって、その後の人生が大きく(恐らく世の多くの人よりも決定的に)変わってしまいます。私がそこで一定の期間を過ごすことになったこれら二つの学校は、幸運なことにそのときの私にとって、とても理想的な空間でした。
もしもこの二つの学校に行っていなかったとしたら、私は、悪い意味において、全く違う人生を送っていたでしょう。四谷アート・ステュディウムもまた、そうした場所です。開校当初に半年間受講した後、通わなくなっていましたが、2007 年に精神的な危機に陥りながらも、何故かふと思い立つようにゼミをとる事に決め、再び通い始めたことは、今作品を作っている人間として、疑いなく幸運なことでした。
 

この場所で行われた様々な議論、ひとつひとつの作品に対する洞察、主体と政治、芸術作品と社会に関わる繊細な思考、それらを学び、そして「場所を持たない」者がどのようにスペースを創り出せばよいのか、そのことに対する明確な意志と思想を「受け止めた」(全て理解した、とは正直なところ未だにいえません)ことは、直接的な心理的危機からの脱出というわけではないにせよ、私にとって自分の生も含めた、重要な核心、枠組みとなりました。
そうした場所を必要とする人は、今もどこかにいるはずです。何を喪失したのかわからない喪失が、本当に怖い喪失です。四谷アート・ステュディウムは、存続するべきです。

●受講講座履歴
2003年後期、2007年岡崎乾二郎ゼミ自由応用、その他シンポジウム、イベントなど多数受講

高橋宏幸

[プラット・インスティテュート客員研究員]


私が受講したのは、開校したばかりの大阪コミュニティカレッジのアーツ・マネージメント系の講座でしたが、四谷アート・ステュディウムについては、常に活気あふれる学校であったと思っています。それが、その後東京に転居して、外からではありますが、私がいろいろと四谷アート・ステュディウムを見させて頂いた印象です。実際、いくつもの大学、そこには関西の大学のサテライト校も含みますが、さらにはカルチャー・スクールまで、なにかを学ぶことができる場所は、東京にはたくさんあります。そのなかで、四谷アート・スティディウムは、芸術の理論と実践を結びつけるための独特な教育を行う場所として、異彩をはなっていました。関西の大学のサテライト校のほとんどが、カルチャー・スクールと同じような、代わり栄えのしないカリキュラムであるなか、四谷アート・スティディウムは、独自の理論に基づく、特徴ある講師をとりそろえたいくつもの講座があり、関東圏の学生や社会人が、セカンド・スクールとして通う場所としてあったと思います。もちろん、セカンド・スクールというだけでなく、大学を卒業した後で、真摯に勉強を続けようとする人、芸術作品を作るための活動の足場にしようと通っている人、どこにも行き場がなくてたむろっている人など、たくさんの方々がいて、交流をはかっていたと思います。なので、それがなくなってしまうことをさびしく思います。

●受講講座履歴
大阪コミュニティカレッジ2003年在籍

2013年12月3日火曜日

「近畿大学である、誇り」細尾直久

[建築設計]


東大阪の近畿大学において、2005 年度の一年間、岡崎乾二郎先生のゼミに所属して、勉強をさせていただきました。僕は文芸学部ではなく、理工学部、建築学科の学生でしたが、たまたまもぐり込んだ「現代芸術論」の授業に衝撃を受け、頼み込んで許可をもらい、ゼミに参加させていただいたのです。大学の建築学科は、専門分野に特化され、制度化されたものであったので、それだけでは飽き足りなかった僕にとって、大学の建築学科という制度から離れた場所で、一見無関係にみえる、様々な領域の背後にある仕組みや、相互間のつながりを見つけ、取り出し、組み立て直していくという、ものを考え、つくる上での本質的なことを、そこで学びました。
ただ、岡崎先生の講義は、熱心な外部からの聴講生が多くを占めており、切実さを持って授業に臨んでいる一方、文芸学部のほとんどの正規の学生には関心をもたれておらず、ほんの数人の正規の学生しかゼミに参加してこないという、奇妙な風景があったことも、書き記しておきます。

東京にでて、四谷アートステュディウムに遊びに行き、研究員合宿や、四谷のイベントにも度々参加することがありました。



まさに四谷アートステュディウムは、普段は別の場所に、それぞれ専門分野を持つ、大学院生やすでに批評家や作家として活動している人たちが、交差しあいながら、様々な領域を結びつける知能の働きを訓練し、ものを考え、つくる拠点として、熱気に満ちていました。
それぞれの専門分野に特化せざるを得ない、通常の大学制度とは離れたところで、様々な領域を横断する、“もうひとつの学校” として機能しているからこそ、四谷の熱気と、知的興奮が存在していたのだ、と思っています。

僕は大学卒業後すぐ、イタリアに留学し、向こうで働くようになり、一年前から京都へ拠点を移しました。イタリアも京都も、一見、古めかしい、過去の遺産でおおわれた場所でしかない、と思われがちなのですが、古いもののなかに沈殿している仕組みや、他のものとのつながりを見つけ、取り出し、組み立て直していくという、“ほんとうの意味での教養” があれば、これほど現代において、ものを考え、つくりあげていくヒントが隠されている場所はありません。

例えば、ローマ郊外に位置する、ローマ皇帝の別荘地であったヴィラ・アドリアーナは、かつての建材が打ち捨てられた、遠い過去への思いを馳せる庭園ですが、壊されてしまった、かつての建築の礎石を庭園に内包し、過去を想起するという、京都における西芳寺の禅宗庭園と、まったく同じ形式をしています。2008 年に福島で行われた、四谷アートステュディウムの研究員合宿に参加したのですが、研究員の方達と議論したことをイタリアで思い出し、それがイタリアと日本の庭園の、構造的類似に気づく大きなヒントにもなっています。

“ほんとうの意味での教養=一種のコモンセンス” を学ぶ場所こそが、“もうひとつの学校”である、四谷アートステュディウムであることは、言うまでもありませんが、最後に、近畿大学の卒業生として、僕は書かなければならないことがあります。

近畿大学に国際人文科学研究所という機関があり、その中に四谷アートステュディウムという学校が存在するということは、近畿大学に、一種の誇りを与えてくれるものでした。現代の世界において、人文科学のフロンティアを、まさに切り開いている先端の場所であり、かつ、そのように世間で認識されているからです。

本来の意味で“大学” とは、就職や仕事に役立つといった短期的な目的の為だけでなく、学生に対して、これから先の長い人生において、考え、研究する方向を示唆するような場所のことをいうのだと思います。そうした意味において、近畿大学が“大学” たりうるのは、まさに四谷アートステュディウムがあるからであり、それを簡単に潰してしまうのは、西芳寺をブルトーザーでコンクリート舗装してしまうような、文化的な暴挙に、近いものがあります。

四谷アートステュディウムを閉鎖させて、近畿大学の通常の講座のなかで、同じことができるとは思えません。大学の講座は現状では、即戦力で就活や資格に役立つプログラムが重視されているように、思われるからです。それに対して四谷のプログラムは、僕が経験したところ、むしろ大学を終えて、社会にでてから、その先に、指針を与えるようなものとしてありました。
目の前の就職にしか関心がいかない学部生に、これに気づくゆとりがあるのかどうか?すなわち、十年後、百年後をも見据えるような射程を持ち、世界のヴィジョンを指し示すべく研究をし続ける場所は、大阪の大学制度の中では位置づけられない、と思うからです。つまり、四谷アートステュディウムのような機関は、大学制度の次にくるもの、その向こう側にこそ、なければならない。近畿大学には、その向かう先、その次がある。

僕は、近畿大学に誇りをもてたのも、それが理由でした。僕は、近畿大学が、東京において四谷アートステュディウムを継続させ、人文科学の最先端を切り開き、そこで学ぶ多くの学生に、大きな示唆を与える“大学” であり続けるならば、近畿大学の卒業生であることを、これからも、本当に晴れ晴れしく思うでしょう。

四谷アートステュディウムの継続を、こころから願います。

●受講講座履歴
近畿大学文芸学部・岡崎乾二郎ゼミ(2005 年度)

●来年度以降 受講予定講座
京都市在住なので、遠隔地からでも受講できる講座が設けられれば、是非参加したいです。

2013年12月2日月曜日

高石万千子

 私は「現代思想」(1980年代、柄谷行人、浅田彰のころ)で そこで私は岡﨑乾二郎の存在を知りました。
のちに同誌が“近畿大学 国際人文科学研究所 東京コミュニティカレッジ”という長い名構の開校広告がのり私は早速入会受講しましたのがはじまりいまに至ります。
いまは“四谷アートステュディウム”(プラネタリー(惑星的)な思考と実践 この上なく明晰な芸術の学校)がつけ加わりました。

 私はユニークなパンフレットが大好き。発行されるとかならず友人に配りました。「すてきな学校で勉強しているのよ・・」と。

「果敢な遭難(冒険)をやめさせることはできません」橋本聡

[「アーティスト」や「基礎芸術 Contemporary Art Think-tank」などで活動しています。最近は「ロバート・スミッソン」のプロジェクトを複数人で企画しています。]


たとえば「政治」や「経済」、「科学」、「芸術」などと並べられ、役割分担のようにカテゴリー分けされますが、それは利便性や効率性などによる手管のようなものです。たとえ多くの人が手管と受け取らないとしても、「芸術」にとっても「何か」にとっても、そのような図式に身を任せることは檻に入るのと一緒でしょう。だから、その図式に囚われずに「芸術」やら「何か」はあらゆることに向かわなければ骨抜きになってしまう。でも、大半の「何か」だけでなく大半の「芸術」を掲げる機関、そして「アーティスト」を掲げる個人でさえ、役割分担に終身しようとします。


四谷アート・ステュディウムは「学校」なり「芸術」という言葉を暫定的に掲げるとしても、上述のカテゴリー分け自体をも解体し、それらのパーテーション(区分け)をフレキシブルに筏なり、サーフボードとなしアクチュアルな冒険をおこすものでありました。それが個人的活動でなく、機関の規模でなされるのだから、より驚愕なことです。個人的活動とは位相が違い、複数の活動を交通させるプラットホームを形成し、アクチュアルなネットワークを駆動させる。そのプラットホームが破壊されれば、そこで交通する多くの者の冒険までもが破壊されてしまいます。既成のプラットホームにのっかるだけの大半の学校とは違い、代わりはないのです。