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最終更新日:2014.7.17|意見数:59件

芸術の学校Yotsuya Art Studium(東京新宿)については画面最下を参照。

2014

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近畿大学国際人文科学研究所ホームページにおける表記を追加報告。

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3月31日をもって四谷アート・ステュディウムは閉校。 在学生有志による近畿大学への存続を求める活動は終了する。今後の活動について、いくつかの講座の受講生により、自分たちで学び研鑽する場を生み出そうとする動きが始まっている。

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提出した署名の請願事項に対する回答を求めるため、在学生有志よりコミュニティカレッジオフィスへ電話で問合せ。窓口担当者からは「署名冊子を渡したが(事務長、所長からの)返答はない。今後も署名に対し何らかの見解を示すことはない」との回答を得る。


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在学生有志が、これまで集めた署名(529名分)を近畿大学国際人文科学研究所コミュニティカレッジオフィスへ提出。提出の際も直接の回答は得られず。


2013年11月13日水曜日

「世界有数の学際性と文化の結束点」中井 悠

[作曲家、研究者、ニューヨーク大学大学院博士課程、ニューヨーク大学非常勤講師]


2003年の開校時から通いはじめ、2005年より研究員の職につき、2006年から2008年にかけて「English Inter-Activeゼミ」の講師を務めました。またこの間、多数のイベント、展覧会、プロジェクト、機関誌「artictoc」の制作などに携わりました。2009年より、ニューヨークに拠点を移しましたが、一時帰国の折や、海外と関わるプロジェクトなどを通じて、四谷アート・ステュディウムの活動との接点を保っています。

四谷アート・ステュディウムは、きわめて多様な文化の結束点としてこの10年間、機能してきました。開校当初、東京大学大学院に通っていた私自身を含めて、集まった学生の多くは他の大学や大学院に所属したり、異なるフィールドやジャンルで作家活動を展開している者たちでした。

そして、おそらくはそれぞれの分野に閉じこもることの限界や物足りなさから四谷に惹き付けられてきたそのような学生たちが、個別に推し進めてきた研究や深めてきた研鑽を携えながら、共に考え、手を動かし、 共通言語を模索しながら議論し、問題に取り組むための仮設的な場、または技法として、「芸術」が中心に据えられていたのです。それまで芸術にほとんど関心がなかった私にとって、このような「芸術」のあり方(使い方)との出会いは新鮮な驚きであるとともに、個々の授業内容を超えた大きな学びでした。「芸術」に対するこの基本的な構えは、学校のカリキュラムはもちろん、国内外からの様々なゲストによるレクチャーや展示、 機関誌「artictoc」や岡崎乾二郎先生を中心に研究員一同で執筆をした『芸術の設計』などの出版物、そして多彩なプロジェクトのすべてに反映されてきたように思います。

10年間にわたる活動の成果は、もちろん個々の展覧会や出版物に留まりません。いまや四谷アート・ステュディウムという学校じたい、いろいろな領域で重要な活動を行なっている世界各地のアーティストや研究者が、東京に立ち寄った際に、各自取り組んでいる作品や研究を発表し、議論を交わし、逆に四谷の活動からも影響を受けて帰っていくという、文化が織りなすネットワークの活発な中枢として機能していますし、そのことは私が現在住んでいるアメリカにおいても確実に知られるようになっています。

学際性(interdisciplinarity)を謳う学部や研究機関は枚挙にいとまがありません。私自身がそうした組織のいくつかに四谷アート・ステュディウムと並行して、日本国内でも、アメリカやドイツなど海外でも身を置いてきました。しかしながら、四谷アート・ステュディウムの活動において展開されている、「明晰な混在性」とでも呼びうる学問と実践の特異な融合をひとたび評価軸に据えおくと、困ったことにどこも名ばかりの「学際性」だと感じられます。それは、諸領域を結びつける術が大方の場合、「学際性」という名目(看板文句)以外に明確なモデルを欠いていることに起因するように思えます。しかし、私が四谷アート・ステュディウムに携わることで学んだように、「芸術」とはそもそも学際性を具体的に立ち上げる緒技法(の歴史的な蓄積)であり、それをこの学校では授業などにおいて細やかな点まで分析するだけでなく、自らの活動の根本に据えおいています。寡聞にして、私はこのような学校をほかに知りません。

とくにニューヨークやサンフランシスコなどオルタナティブな教育モデルを模索している人が多い地では、四谷アート・ステュディウムの活動形態をすこし説明しただけでも、大きな反応があります。またあらゆる学術機関が企業(サービス業)化するなか、 短期的な経済とは別の原理に沿って教育と研究を社会的な実践と結びつけるこの学校の方針は、バウハウスやブラックマウンテン・カレッジなど、歴史上名高いさまざまな芸術学校の真髄を受け継ぐ稀有な例として注目を集めています。

こうした理由からして、四谷アート・ステュディウムを閉校にすることは、ひとつの教育機関の問題に留まらず、そこを拠点に形成されているネットワークと共同体をずたずたに切断し、培われてきた真なる学際性のモデルを軽率に破壊することを意味します。とくに、充分な予告や説明を欠いたまま、このような重大な決断を一方的に告知し、強行することは、かならず大きな抗議と反対の声を世界各地から招き寄せ、深刻な責任問題に発展することでしょう。世界有数の学際性と文化の結束点である四谷アート・ステュディウムの無思慮な閉鎖は、したがって、近畿大学の運営戦略からしても端的かつ致命的な誤りです。手遅れになる前に、この無闇な決定が再考され、四谷アート・ステュディウムが来年度以降も存続することを強く希望します。

●受講講座履歴
2003年度:ANTINOMIE展、芸術理論ゼミ
2004年度:芸術制作ワークショップ、芸術理論ゼミ
2005年度:高橋悠治ゼミ
2006年度:コンテンポラリー・アート/ダンスの核心——トリシャ・ブラウンさんを迎えて、English Inter-Activeゼミ(講師)
2007年度:English Inter-Activeゼミ(講師)、Experiment Show
2008年度:English Inter-Activeゼミ(講師)、 EDUCATION IS EVERYTHING(講師)
2009年度: スティーヴ・パクストン、レクチャー・デモンストレーション+ダイアローグ